≪おはなしのおはなし≫
  
ストーリーテリングの中から想い出深いおはなしや私の覚えたものをここにご紹介します。
おはなしの輪がますます、広まっていくことを願いながら書きとめてみました。
お気に入り、聴いてみたい、読んでみたいおはなしがありましたらお知らせ下さいね。



頭の大きな男の話 [日本] 「日本の昔話Cさるかにかっせん」より 福音館書店
『頭に柿の木』というような類似話があります。よく知られているのは、ぐうたらで酒飲みが頭に柿の木が生えてきたおかげでさらに、そのままぐうたらで楽しく暮らしました、という結末が面白いのかもしれませんが、ぐうたらで楽をしようとして結局は痛い目にあうのが定番中の昔話。でもって、結末にこだわりをもっていた中、小澤俊夫さんによるこの再話を知って嬉しかったです。
実際に、耳で聴く機会に恵まれ、とても私自身が楽しめました。語っている方もとても好感をもちました。
今回、小澤さんの講演を聴く事になり、この機会に私も語りたいと思いました。やはり、結末がいいですね。
三度の繰り返しと、助詞の使い方の小澤さんらしいこだわりを意識して語らせてもらいました。
子ども達も楽しんでくれたのが何より嬉しかったです。
結末の意味はわかったでしょうか?

アナンシと五 [ジャマイカ] 「子どもに聞かせる世界の民話」 実業之日本社
おはなし会のプログラムには必ずストーリーテリングをいれるきっかけとなったお話です。共におはなし会を立ち上げてくれた、おはなしの先輩であり、友人が語るこのおはなしに触発されて「よし、頑張っておはなしを・・」という気持ちにさせてくれました。
「アナンシ話」は他にもありますがこのおはなしが最も定番で子ども達も喜んで聴いてくれます。
アナンシはずる賢い奴です。魔女が「五」と言ったものは呪われてしまうというのを盗み聞きし、道端にサツマイモの山を5つ作ります。
アヒルやウサギはまんまと引っ掛かってしまいますが、ハトの奥さんだけには通用しません。たまらずアナンシは・・・
一、二、三、四、五、と子ども達も一緒になって数えてくれて喜ばれるお話です。

アナンシの帽子ふりおどり [アフリカ] 「おはなしのろうそく 16」 東京子ども図書館
上記の「アナンシ話」のもうひとつのおはなしです。くもがなぜ、髪の毛がないのか、草むらでじっとしているかというなぜなぜ話ですが、お葬式の喪が明ける意味などが低学年以下の子どもには難解だと思います。高学年以上から大人向けにはとっても可笑しくて笑えるおはなしです。ですから、いつでもどこでもというわけにはいきませんので、このおはなしを覚えようか隋分、迷いました。こういうおはなしの場数が増える事を期待しつつ、それでもよく聞いてくれる子は「ア、ハハハ・・♪」と笑ってくれたよね〜と思い起こしています。
アナンシも可笑しいですが、アナンシにとっては、いらないお節介焼きのハリネズミやウサギやヘビやホロホロ鳥の存在がこのおはなしを盛り立て引き立てていることを意識しながら語りました。


あまがえるが雨の日にケロケロ鳴くわけ [韓国] 「ライオンとやぎ」 こぐま社 
私が初めて覚えた想い出のお話です。まだ、ストーリーテリングの何たるかも解からない時とにかく語りたい一心で覚えました。
6月、雨の季節に最適のお話。カエルが「ローケッ、ローケッ」と鳴くところなどとても愉快です。でも、いつもお母さんカエルに逆らってばかりいたカエルは最期にとうとう、・・・
子供の頃、田植えの時期になると、農家の実家で手伝わされました。子供心に、何とかして逃れたいとウソをついて母を困らせた事がよみがえります。胸が本当は痛いのだけど・・母も解かっていたようです。大人になって子供の気持ちも母の気持ちも手に取るように解かって胸がキュンとなります。教訓話だと受け止めるかどうかは語り手、聞き手に任せるとして・・
初めて語ったときは母への思いだけを考えました。そんな私にとって大切な物語です。


同じようなおはなしで『おばけのトッカビ』より「おやふこうなあおがえる」があります。松谷みよ子さんの再話ですがこちらのほうが短くさらりとしています。3年生は「おやふこう・・」高学年・公民館では「あまがえる・・・」を同じ頃に届けてみました。子ども達はどちらが好きでしょうね。

あゆはかみそり [日本] 「子どもに語る日本の昔話B」 こぐま社
「和尚と小僧」の中に収められている一話。滋賀県のお話で元住んでいた所で語る毎に綺麗な水を想います。
鮎を食べさせたくない和尚さんがかみそりだとごまかす。そこで、小僧さんはなんとかしてやりこめようと・・・
和尚さんと小僧さんの絶妙なコンビととんちのきいた話は一休さんを思い浮かべる子もいます。
関西弁もこのお話のスパイスとして生き生き描かれています。どの地方でも通用するおかしみのある話です。
もう一話は、「あめは毒」奈良県のお話。
これも水あめは子供に毒と言われた小僧さんが知恵をはたらかせて全部なめてしまうというおまけの話です。

ありこのおつかい [石井桃子] 絵本 岩波書店
2007年3月10日に百歳を迎えられた、敬愛する石井桃子さんを祝して覚えました。
中川宗弥さんの絵も素敵な絵本ですので、家庭では、幼い子ども達に読んであげても良いと思います。でも、大人数のおはなし会では、絵本よりもおはなしとして届けた方が子ども達が自由に頭の中で描いてくれるだろうと勇んで覚えてみました。

お母さんにお使いを頼まれたありこが、言いつけを聞かず道草を食ったため、かまきりに食べられ、かまきりはムクドリに、ムクドリは山猫に、山猫はくまの子にと順々に食べられてしまいます。そのお腹に入っていく時に発する「ばかぁ!」等という声が面白くて子ども達は大喜びしてくれます。でも、くまのお母さんからおしりを叩かれてまた次々と口から出てくる事になるというこのお話は「ついでにペロリ」を初めとして似たような「のまれた昔話」がありますが、これは創作という事もあってか、それらと比べると、覚えるにはやや困難という印象をもちました。
間違えたり、つまったりすると、このおはなしの面白さが半減しかねないという責任感みたいなのも感じましたね。
でも、くまの子のお誕生日にみんなが仲直りしたというラストに、子ども達も良く聞いてくれ、とっても満足感と達成感がありました。

「桃子様、お誕生日おめでとうございます♪語れて良かったです。」


アリョーヌシカとイワーヌシカ [ロシア] 「まほうの馬」 岩波書店
ストーリーテリング講習会で珍しく?語り方を誉められたおはなしです。グリムの「兄と妹」にも似た話。 
魔女にだまされ水底に沈められた姉とヤギに変えられた弟の行く末にぐいぐいひきつけられる昔話です。
水底からの声の一節は調子が整うように少し文章を変えた方がよいとアドバイスを頂き変えてみました。
詩のようで、歌うわけではないけど心に音楽が鳴り響くようなきれいなアリョーヌシカの声が印象深い物語です。


いうことをきかないウナギ [イタリア] 「愛蔵版おはなしのろうそく4」 東京子ども図書館
「ふしぎな世界」をテーマにブックトークした際、導入として語りました。イタリアの特徴を取り入れたユーモアのある短いお話です。
かごにいっぱい「ウナギ」を入れた漁師がベニスの運河を渡ろうと料金を船頭に聞きますが「ひとり頭 5銭」という返事にウナギの頭を見ながらこれは高くつくと勘違いをした漁師がしたことが滑稽なのですが、この事を理解できるのは高学年以上かなと感じました。
「ひとり頭」という言葉の意味やイタリアがわからない子どもにはこの可笑しさが理解できないかもしれません。
でも、おまけのおはなしとしてすぐ語れますので、覚えておいておはなしリストの引き出しに入れておくにはいいかと思います。


後日談:おはなしの前に世界地図を開いてイタリアの場所、形を確認させました。(ギリシャも近いのでオリンピックが開催されたアテネもどこにあるか確認)そして、ベニスが入り江に位置していて水の都と呼ばれる所以を説明してから語りました。おはなしの短さに比べて説明の方が長くなったかもしれませんが子ども達はよく判ったようです。

いちばんのねがいごと [ミヒャエル・エンデ] 「魔法の学校」 岩波書店
このおはなしは、ストーリーテリングとしては相応しいかどうか疑問もあったのですが、ブックトーク(テーマ:まほう)としてこの本を紹介するために覚えてみました。散文詩のような流れになっていて、願い事は子どもに限らず誰でも叶えてほしいと思わない人はいないでしょう。
この本を紹介する時も「いっぱい、願い事がある!」といっていた子もこのおはなしをしたら寡黙になってしまいました。私もかなりインパクトがあったものですから
ある意味面白いかもと冒険したのですが、当たり外れがあるおはなしかもしれません。でもさすが、エンデだという気がします。

エパミナンダス [S・Cブライアント] 「愛蔵版おはなしのろうそく1」 東京子ども図書館
このお話は文句なしに子供を抱腹絶倒、楽しませてくれるから語り甲斐があります。
お母さんに頼まれおばさんの所へ行きお土産を貰って帰ってくるのですがとんちんかんな事ばかりの連続。
「おっかちゃん」という言い方も子供の笑いをとります。「あたまがない」というお母さんに幼い子には難しいかも?

エパミナンダスは頭が半分ないのか?と勘違いしている子に語りながら吹きだしてしまって大失敗しました。
小学中学年からの方がおかしみがわかって喜んでくれます。でも、最後のオチはどれだけの子がわかるかな?
4年生おはなし会でも殆どの子が面白かったと言ってくれました。お手紙までもらって嬉しかったです。こちら

後日談(名誉のため?)「あたまがない」を勘違いした子も、後で意味がわかり私の所へきて「あたまがないおばちゃん」と親しんでくれました。「エパミナンダス」によって二次的言葉を獲得したのです。創作は昔話と違って作者の思い等が込められていますので、むやみに手を加える事を避けたいと思います。幼い子には言葉が理解できないからと変えてしまうことより、日常会話(一次的言葉)では得られ難い言葉をおはなしや絵本で習得していくものと、長い目でみたいものです

王子さまの耳はロバの耳 [ポルトガル] 「子どもに聞かせる世界の民話」 実業之日本社
「王様の耳はロバの耳」で知られている話。でも、ちゃんとした話がこれです。3という不吉な数は昔話の定番。
3番目の妖精に呪われてロバの耳を持ってしまった王子の耳を何とかして隠そうとする王様のとった手段は・・・
葦笛のメロディーは子供の頃、劇場で聞いたふしを覚えていて実際聞いたものよりゆっくりと歌ってみました。
(軽快なメロディーにすると、このおはなしの雰囲気を壊して軽くなってしまうため)
この歌を歌うと子供たちも耳をすまして、クスッと笑ってくれました。

おおかみと七ひきの子やぎ [グリム] 「子どもに語るグリムの昔話@」 こぐま社
このお話を覚えてから子どもの前で語るまで何と4年半も費やしてしまいました。
グリムは語るにも難しいし、聞き手もそれなりに聞く力を必要とされるということからグリムは長いこと敬遠していました。
このお話ならと安易な気持ちで覚えたら指導者から「貴方は本当にこのおはなしを語りたいの?」と言われてしまいました。
それで、しばらくお蔵入り。少し成長して?やっぱり、語りたいと思って最近やっと、戻して初披露できました。
熟成できた話だったでしょうか?知っているようで知らない部分も多いストーリーに子ども達はのめりこんでくれました。

おなべとおさらとカーテン [村山籌子] 「リボンときつねとゴムまりと月」 JULA出版局
TVで子ども達に語りをされている方を取り上げていた番組を見ていて、このお話の虜になってしまいました。
文体が古めかしいのは作者が生きていたら百歳の方だからでしょうね。読むとどうってことない話なのに耳で聴くと面白いから不思議。
お台所から逃げ出そうとした、おなべとおさらとカーテンの結末は・・・ぷっ、何か変です?

おばあさんがエプロンをながくした話 [ホープ・ニューウェル] 「あたまをつかった小さなおばあさん」 福音館書店
んなおばあさんがいたら、どんなにか楽しいことでしょうと思ってしまいます。どんな困難なことに出会っても、頭を働かせて機転を利かせ上手に切り向けるおばあさんなのですが、本当に頭が良いのかわからないところにこのおはなしの面白さ、ユーモアがありますね。
全部で9編入っている「あたまをつかった小さなおばあさん」の中からこのおはなしを選んだのは季節感がなくて、いつでも語れるという事と、このユーモラスさがやはり好きだなと思えたからです。
今の子ども達はエプロンなんて作らない(以前は、家庭科で作ったような気がします)のでキャラコとかフリルをつけたら長くなるかわかるかしら?と、思いキャラコの説明とエプロンを実際に見せてから語りました。さすが、女の子はわかったみたいですね。部分的にあれれ?と思うところを男の子も突っ込んでおはなしの中に入っていましたね。

どのおはなしも、(9話全部)初め、おばあさんの冒頭の紹介部分を語ってからそれぞれの話をした方がおはなしの中へ自然に入っていくことが出来ると思います。

雷神さま [台湾] 「太陽征伐」 小峰書店
台湾には、原住民と漢民族がいるそうです。山地に住んでいる原住民は平地に住んでいる漢民族とは、違って教養が乏しくて素朴ですが、その想像力は豊かで自然の中で勇ましく闘ってきたようです。そこから、うまれ伝えられた話も豊富で、抱腹絶倒するような楽しいおはなしもあり、中でも、私はこの「雷神さま」にはとても親しみをもって受け止め語り伝えたいと思いました。テキスト本は、筑波大学中国教師の張 良澤氏の文に同名誉教授で昔話第一人者の小澤俊夫氏の監修によりますが、加えて、丸木俊さんの挿絵と、私の好きな小野かおるさんも装丁されていることに着眼しました。美術館主催の丸木俊絵本展にておはなしさせて頂きました。

かん太さまのいびき [松岡享子] 「くしゃみくしゃみ天のめぐみ」 福音館書店
このお話が昔話ではなく創作というから驚きです。それ位よくできた話。さすが、松岡さんと言いたくなります。(東京子ども図書館主宰)
6月の雨の季節から夏に語るに最適です。かん太は並外れたとてつもなく大きいいびきの持ち主で、どこで寝ても皆に迷惑かけます。
とうとう、寝る所のなくなったかん太は山へ行って寝ました。すると、雷様が降りてきて・・思わぬことになります。
馬が力抜けたり、ブタが痩せてしまったり、カエルが耳を押さえるなど楽しい場面の連続で長いけど飽きないお話です。
この本の中には、他に「くしゃみ」「しゃっくり」「おなら」「あくび」と、この「いびき」のお話が収録されていて人間の生理現象をユーモラスに語りかけ、笑いを誘うものばかりです。

子うさぎましろのお話 [佐々木たづ] 絵本 ポプラ社
ご存知クリスマスの絵本です。三好さんがとても可愛らしい絵を描かれているのでそのまま家庭では読まれても良いと思います。
でも、集団には遠目がきかないので、ストーリーテリングで届けました。愛らしい、ましろの話をクリスマスに耳だけで聴いて子ども達が、イメージしてくれるといいなと思って語りました。サンタクロースの神様のような寛大さと無垢なましろの心の移りかたが気持ちを温かくさせてくれます。大好きなお話です。実はこのお話は初めは、絵本でなく「もえる島」という幼年童話に収録されていました。
すでに絶版なのですが長崎の図書館にあって実際に手にとって大感激しました。復刊される事を望みます。

こじきのくれた手ぬぐい [日本] 「松谷みよ子のむかしむかし 3」 講談社
他の方が語られていたのを聴いて面白かったので私も挑戦しました。
おかみさんに冷たくされた乞食が下働きの娘に親切にされて、お礼に手ぬぐいを置いていきます。実はこれが不思議な手ぬぐいだったのです。どんな手ぬぐいかということがストーリーの進んでいく中で解かるのですが結構引っ張ります。これがいいのでしょうね「何、何?」と話に引き込まれていきます。そして、おかみさんもこの手ぬぐいを手に入れようと策略してやっと、手に入ったと喜んだのも束の間、思わぬことに・・・
結末は、大体予想がつくと思ってたのですが結構、意外な展開になってしまうから面白い。短いけどとても満足感があります。

こびととくつや [グリム] 「子どもに語るグリムの昔話E」 こぐま社
グリムの中でもよく知られているおはなしでしょうか。子供の頃からいつとはなしに聞いたおはなしでしたが曖昧なのは小人の人数。
10人も出て来るような絵本もありますが原作を何度も読み返してみて2人だからこそ、このおはなしが生きてくる事に気付かされました。
決して、長いおはなしではないのですが1フレーズが長くて語り難い言葉が多くて苦労しました。グリムは本当に集中力が特に必要とされると思います。それから、このおはなしには小人が歌う歌「どうだい、おいらは・・・♪」のメロディーがどうしても歌にならないのです。
このおはなしは無理かな?と思いましたが、イメージを自分の中で広げて何度も口にするうちに小人らしき歌がやっとできました。子ども達の「クスッ」と笑った顔が印象的です。それにしても初心者には向かないおはなしだと実感しましたが、クリスマス会向きのおはなしです。

こんな顔 [日本] 「子どもに語る日本の昔話@」 こぐま社
怖いお話というものは、聞くのは嫌いではありませんが、語るのは苦手かも?
でも、いつとはなく、語ってみたい。特に、日本の昔話からと、何となく思うようになりましたが、いざ語るとなるとどうしようかと思い迷っていました。これはやはり、知っているお話で語りやすいところからということで「このおはなし」に決まりました。(和歌山県の方言入り)
短いし、そんなに悪が強くないからいいでしょうと思ったもののいざ、語ってみると「ちと、怖かったかも?」怖いお話だから、怖くて当たり前なのに・・・(苦笑)怖いお話にやみつきになったらどうしましょう?
子ども達も、「怖くない」と言っていましたが、やせ我慢しているような気がしましたね。


三枚のお札 [日本] 「愛蔵版おはなしのろうそく3」 東京子ども図書館
おはなし会は通算200回を超えましたが、記念すべき第1回おはなし会の最初のおはなしが「三枚のお札」です。秋の栗の季節に最適。友人が語る昔話に子どもといっしょに楽しんだ思い出深いおはなしです。福音館書店からの絵本や他にも色々ありますがやはり、これがおすすめ中のおすすめです。
寺の裏山に栗拾いに行った小僧さんは、おばあさんに身を変えた鬼婆と出会います。小僧さんが鬼婆から逃れるためにお札の力を借りますがスリル満点で怖いけど楽しいお話です。話の構成や唱え言葉の小気味良さなどが面白くて子ども達が好きなおはなしです。

三まいの鳥の羽 [グリム] 「子どもに語るグリムの昔話D」 こぐま社
三度の繰り返しと納得のいく結末にこれぞ、昔話の王道という満足感のあるストーリーです。
最初から、三人目が「ばかさま」と呼ばれているという面白さから聞き手をひきこみます。そして、ずるい兄さん達と王様の甘い取り決めによって運ばれていく展開に語る側は気を緩めず集中力がいることと一文が結構、長いため、一息で語らなければならないのでお腹からしっかり発声することの大切さを感じました。又、「太ったひきがえる」のイメージの取りかたも難しいながらも、魅力ある不思議な存在なので語りがいがあります。最後は、「ばかさま」が王様になり「かしこく」国を治めたというという結末も見逃せません。本当によくできたおはなしです。子ども達もひとつおはなしをしっかり聴いたと感じたのでしょうか、本の紹介時、「これを暗誦したんだ」と言われてしまいました。

それにしても、グリムの昔話って、本当に奥が深いと痛感します。


七わのからす [グリム] 「子どもに語るグリムの昔話B」 こぐま社
「おおかみと七ひきの子やぎ」に替わるグリムのお話として覚えたものです。7という数字も定番です。
女の子がからすに変えられてしまったお兄さんたちを取り戻すために旅に出て苦労の末、呪いを解いて家路に着くという物語。
不思議な時空感があり、世界の果てまで行くところは最も興味とイメージが拡がる場面です。特に、女の子がお星様からもらった鍵をなくしてしまった為、指を切って鍵穴に差し込む所は子ども達も一瞬ドキッとして固唾を呑みますが先への展開の興味からとても集中して聴いてくれました。このおはなしによってグリムの世界が開けました。

十二のつきのおくりもの [スロバキア] 「愛蔵版 おはなしのろうそく 1」 東京子ども図書館
マルシャークの「森は生きている」の原話です。これもできればクリスマスに届けたいお話です。
これが上手く語れるようになればストーリーテラーよ。と、言われて力が入りました。初めの頃は筋を追うのにやっとという感じでした。
それだけに、「上手くなったわね」と指導者からお褒めの言葉を頂いた時の嬉しかったことは忘れられません。
色彩感溢れる豊かなイメージをもったお話で、月の精の神秘性もとても印象的です。
クリスマスおはなし会で語った時の事。小降りの雪が降っていました。月の精による杖の一振りで焚き火が上がったシーンになったら、不思議に外が明るくなって一筋の光が差し込んできました!なんという偶然の自然のシチュエーションでしょう。大感激で、神様に感謝しました。

すずおばあさんのハーモニカ [あまんきみこ] 「きつねの写真」 岩崎書店
このお話もまだストーリーテリングの何たるかを解かってなかった時に覚えたものです。あまんさんの作品は大好きです。
私の母とこのすずおばあさんには共通点があって、やはり母を想いながらこのおはなしに触れました。
きらきら星しか吹けないおばあさんの前にどこからか1匹のきつねがかくれていて、一緒に合わせてハーモニカを吹きます。
おばあさんときつねの心温まる物語で秋の花がこの話に彩りを加えています。
ハーモニカの部分を初めはキーボードでしてみましたが、生のお話には似使わない。子どもが音だけに興味をもってしまうので止めました。それで、きらきら星をハミングに変えてみたらずっと、自然で子ども達も静かににこやかに聴いてくれたように思います。
黒井健さんの絵で絵本もあります。

スヌークスさん一家 [ウィリアムズ] 「愛蔵版おはなしのろうそく1」 東京子ども図書館
私をストーリーテラーに導いてくれるきっかけとなったお話です。ある会場で淡々と語られておられるその方のお話は面白すぎました。
こんなに愉快な話をどうして笑わずに語られるの?と思うくらい語り手になって語る事の難しさを感じました。下唇を上唇にかぶせなければ息の吹けないスヌークスさんやその反対の奥さん、息子、娘の唇の格好を聴く側も真似したくなります。その姿を見るとつい、語ることも忘れて笑ってしまう、とても可笑しな話です。そして、又、元に戻るきりなし話でもあるからたまりません。

小さなこげた顔 [アメリカ] 「アメリカのむかし話」 偕成社
私の尊敬するおはなしの大先輩がこれを語られるのを聴いて、いつか私もと感じ入ったアメリカ・インディアンのストーリーです。
インディアンの生活や習慣などをまず知らなければ語れないと教えてくださいました。
誰の目にも見えない大酋長の姿のイメージが想像を絶する壮大で神格的。インディアンのシンデレラストーリーといったようなお話です。
絵本でも「みにくいむすめ」としてデヴィット・シャノンさんの絵でありますが、こちらの方がおすすめです。
絵で見るより、おはなしを頭で描いた方がイメージが拡がります。それだけに、高学年向きのような気がします。

ちいちゃい、ちいちゃい [イギリス] 「イギリスとアイルランドの昔話」 福音館書店
ちいちゃい、ちいちゃいばかりが続いて何て変なお話。でも、かわいいおばあさんの話かな?と、思いきや実はドキッッ!!・・・・・
墓地で骨を拾った所からそれまでのにこやかな顔がだんだん変わっていきます。そして、子供たちは・・・
少人数向きのお話で近くに寄せて、小さな部屋ですると効果的なお話です。そして、より暗い方が尚効果的です。
失敗するとつまらない、あたりはずれのはっきりしたお話と言えます。


ついでにペロリ [デンマーク] 「愛蔵版おはなしのろうそく3」 東京子ども図書館
このお話も「スヌークスさん一家」を聴いた時、次のお話として聴きました。
おばあさんの留守中におかゆの入ったおなべの番を頼まれたネコでしたがおかゆをペロリと平らげ、ついでにおなべもペロリ。次から次に呑み込んでいく繰り返しなので、とても楽しくて解かりやすいお話です。それだけに、また初めて聴いた人も語る側が話を間違えるとすぐわかってしまいます。リズミカルでテンポを効かせて語るお話だと思います。

年こしのたき火 [日本] 「日本のむかしばなし」 のら書店
大晦日の昔話です。お正月を迎える準備もできないほどの貧しい、おじいさんとおばあさんの家に貧乏神が福を置いていくという謂わばサンタクロースに代わる時代の昔話でしょうか。瀬田貞二さんの舌に乗せやすい言葉の響きが好きで、語るに難しくありません。
まったりとした優しい仲の良い老夫婦だからこそ思わぬ幸せが訪れ、満足感のある結末に安心して誰でも聴けるおはなしだと思います。1年最後のクリスマスおはなし会に届けてみました。子ども達は静かに、にこやかな顔で聞いてくれました。

鳥呑爺 [日本] 「日本昔話百選」 三省堂
鳥の鳴き声の繰り返しが絶妙に楽しくて、子ども達にとても喜ばれた昔話です。
山で鍬を立てて仕事を休んでいたおじいさんのところへ「あやちゅうちゅう、こやちゅうちゅう・・・」と鳴く鳥に、面白がったおじいさん。
今度は指に、次には舌に乗せて鳴かせてみせたものの思わずその鳥を呑んでしまって・・「えっ」とここで子ども達も舌を出して驚きます。
ついにはおじいさんのおへそから飛び出した鳥のシッポを引っ張ると又、鳥の鳴き声がします。さらに喜んだおじいさんは・・・
我が家では、主人がこのお話を大好きで探し物をする時に「あれはどこだ?あやちゅうちゅう、こやちゅうちゅう・・・」と言いながら探すくせがあります♪

なら梨とり [日本] 「愛蔵版おはなしのろうそく3」 東京子ども図書館
三人兄弟の内三番目が成功する典型的な日本の昔話です病気の母親になら梨を食べさせようと出かけていきますが二人の兄は岩の上の不思議なおばあさんの教え通りにしなかったために、沼の主にゲロリと呑まれてしまいます。最後に三郎がお兄さんを助けるために行きますが・・・・沼の主との格闘場面になったらおはなしに聞きなれていない子も固唾を呑んで聴き入ってくれていました。笹の「ゆけっちゃ、がさがさ。ゆくなっちゃがさがさ・・」や、ふくべ(ひょうたん)からす(啄木鳥)のリズミカルな音は耳に心地よく響きます。
さらに、クライマックスのなら梨の歌はこのおはなしを盛り上げてくれます。特に、男の子が喜んで聴いてくれたお話です。こぐま社の「子どもに語る日本の昔話」にも収録されています。

ねことねずみのともぐらし [グリム] 「子どもに語るグリムの昔話A」 こぐま社
ねことねずみが共に暮らしたらどうなるか?
このおはなしの冒頭の段階で、子ども達から「トムとジェリーだ」という声が上がりました。でも、このおはなしは違っています。
2匹が蓄えておいた大事な食べ物をねこは名付け親に頼まれたと偽り、ねずみを騙して出かけて行き、3回に分けて、こそっと食べて独り占めしてしまいます。ねずみは最後に騙された事を知りますが所詮、ねずみはねこに勝てる筈がありません。
グリムはその真髄をからりと三度繰り返される「名付け子の名前」のユーモアを交えながら伝えているのでしょう。
そのおかしみが素直に伝わる幼い子ほど面白がって聞くようですが、成長するに従い「ねずみがかわいそう」と感じるようです。
ある大人の方は「そう、世の中ってこんなものですよ!」の結語に残酷感があり「仲良く暮らしていたのに、ねこはねずみを裏切った悪い奴」と言われました。でもこのお話をよく味わえば、初めからねこの企みがわかります。ねずみの間抜けさも・・・
ねこがねずみを食うのがねこの本性なのです。
それを、「かわいそう」と感じることができるのが人間なのですね。

ねずみじょうど [日本] 「愛蔵版おはなしのろうそく2」 東京子ども図書館
「おむすびころりん」として知られているおはなしです。地下の中に入っていく不思議さとねずみの世界の様子が印象的で楽しいお話。
黄金を持ち帰ったおじいさんが羨ましくて隣の目くされじいさんもまねをして行きます。が、ねずみがお米とぎしている最中に、ねこの一声を出したため明りが消え暗闇の中でとうとう目くされじいさんはモグラになってしまうというお話です。あまり結末は知らてないようで子どもたちから驚きの声がありました。現実と穴の世界の違いとスピード感を出す場面、ゆっくりと表現する所など課題は多いですが語っていても本当に楽しいお話です。ねずみたちの歌は威勢のいいリズミカルなふしにすると、このお話が生き生きとしてきます。

はんぺらひよこ [スペイン] 「世界のむかしばなし」 のら書店
因果応報なんて言わないで下さいね。私は、このひよこちゃんに悪い奴だけど憎めない気持ちを持って語っているのですから・・
末っ子のひよこは体が半分しかないですが、怖いもの知らずで好奇心旺盛です。ある日、王様に会いに行くためにめんどりの止めるのもきかずに旅に出ました。途中、小川の水や、焚き火、風などに助けを乞われますが「そんな暇はない」と冷たくあしらって行きます。
やがて、お城に着いたひよこでしたが思わぬ災難に遭います。風見鶏は何故、屋根のてっぺんであんな格好をしているのでしょう?という「なぜなぜ話」として受け止めてもらえると嬉しいです。
福音館書店から「はんぶんのひよこ」として、又ほるぷ出版からも出ていますが「はんぺら」という響きが好きで口に乗せやすいと思ったのでこちらにしました。以前、学習研究社から出版されていたものです。

ふしぎなたいこ [日本] 「ふしぎなたいこ」 岩波書店
上記「ありこのおつかい」の次に覚えたおはなしです。もちろん、引き続き、百歳を迎えられた、敬愛する石井桃子さんを祝して覚えました。
『子どもに語る日本の昔話』の「鼻高たいこ」や『日本昔話百選』の「源五郎の天昇り」が類似話としてありますが、比べてみると、石井桃子再話によるこのおはなしの方が幼い子から大きい子まで楽しめると思いました。
それに加えて、滋賀県琵琶湖にまつわる昔話であることから、いつかは語ってみたいと思っていましたのでタイムリーでした。天の川が出てくる事からも、6月から7月にかけて届けるに最適だと思います。

たいこのばちが「ばちがあたった」というオチも愉快ですね。(幼い子は理解できないかもしれないですが、あえて説明は不必要かと思います)それにしても、「フナの味噌漬」は、食べたいなァ〜。

「桃子様、お誕生日おめでとうございます♪語れて良かったです。」


北斗七星 [トルストイ] 「おはなしのろうそく25」 東京子ども図書館
2004年5月に新刊されだばかりの「おはなしのろうそく25」を手にして、このおはなしに電気が走りました。「これは、すぐにでもおはなし会で語りたい」と思ったのです。一度読んだだけでこんなにも今すぐに覚えてしまいたいと思うおはなしは珍しく、実際に即、覚えてしまいました。
日照りで、水のない日が続く中、ひとりの女の子がひしゃくに水を汲んでお母さんに飲ませてあげたいと水を探しに出かけますが何処を探しても水は見つかりません。くたくたに疲れた女の子は・・・
作者はロシアの文豪 トルストイです。静かで清らかな満足のいく展開、そして、最後の北斗七星の謂れがさすがという気がします。
下記の『星の銀貨』ともどこか雰囲気が似ています。
これは夏のおはなし会で届けたいと思いました。夏の夜、満天の星の中でも、探しやすい北斗七星をまず、子ども達に説明をしてから後はおはなしに身を委ねて誠実に語るのみ。短いのに満足感があって好きなおはなし、もち話になりそうです。


星の銀貨 [グリム] 「子どもに語るグリムの昔話B」 こぐま社
やはり、クリスマスの季節に、ふさわしいおはなしです。身寄りのない少女が神様だけを頼りに出かけていく中で困っている人たちに持っている全ての物をあげてしまいます。すると、空から星が銀貨になって落ちてきて・・・・
最後に女の子はお金持ちになりました。という終わり方が気になり、いろんな方のアドバイスを頂いて女の子は幸せになりました。と変えて語りました。
このお話は「子うさぎましろ・・」に比べると三分の一の短いお話なのに、しっかり聴いた気分になるから不思議です。そして、語る側も集中力と研ぎ澄まされたような神経でいるからでしょうか、短さを感じさせません。イメージを大切に心を込めて語りたいおはなしです。


ホレおばさん [グリム] 「子どもに語るグリムの昔話@」 こぐま社
いつの頃からか知っていたグリムの中では好きなお話の一つです。やはり、他の方が語られていたのを聴いて、とても心に残りいつか私も覚えて語ってみようと思いました。
ドイツのヘッセン地方では、雪が降ると「ホレおばさんが羽根布団をふるっている」と言い伝えられています。不思議な力をもつ老婆、ホレおばさんによって、かわいそうな気立ての良い娘が幸せになり、怠け娘は報いを受けるという繰り返しのある典型的な昔話です。井戸の上に止まっている雄鶏の存在は長さを感じさせないような一役を買っているように思います。「タール」というものがどんなものか子ども達に理解できるか心配でしたので、少し説明を加えました。私の中では「ホレおばさん」を語る事によって、「グリムおばさん」に近づくのでは?と思いましたが果たして・・・。

マッチ売りの少女 [H・C・アンデルセン] 「おはなしのろうそく23」 東京子ども図書館
「おはなしのろうそく23」が刊行されるまでは、アンデルセン童話をストーリーテリングでは聞いたことがありませんでした。
それだけ、語りでは難しいと思われてきたのでしょうか。この「マッチ売りの少女」を知った時も美しい文体だと思いましたが、どういう人が語るのだろうと他人事のように考えていました。でも、2005年がアンデルセン生誕200年と知ってから、これは是非、2005年のクリスマスおはなし会に子ども達に届けてみたいと思いました。一見、よく知られているアンデルセン童話ですが、抄訳されたものやアニメ絵本でしか知らない子どもが多いような気がします。

この新井督子訳は、原作に忠実で洗練された言葉が読んで覚えて繰り返す中で、私の内に美しい映像となって染み込んできました。
決して、センチメンタルなお話としてではなく精神性の高い、清らかなお話であることが語れば語るほど、味わい深く解せました。
これは絵本ではなく、(絵本をいくつか探してみましたがやはり適当なものはありません。絵が邪魔になるのです。)ぜひ、言葉だけを聞いて頭の中で想像で描いてほしい。そんな思いで語りました。完成度の高いおはなしです。


むかしむかし [E・ファージョン] 「ムギと王さま」 岩波書店
アンデルセンの次といったら、そりゃぁ、ファージョンでしょう?「第1回アンデルセン大賞」受賞ですもの。岩波文庫ではこのおはなしは収録されていませんでしたので、これは大人になってから知りました。子どもの生活風のおはなしだったり、昔話風、ナンセンス、風刺を交えたもの、寓話など多彩です。不思議な魅力をもった彼女のみずみずしい感性を石井桃子さんの美しい文体で訳されていると思います。「文句なしにこの言葉だからいい、この翻訳でなくてはならないし、この言葉で子どもに届けたい」と偉そうに思ってしまいました「十円ぶん」も「小さいお嬢さまのバラ」も好きですが、語るとなると私のキャラではない(キャパ?)ように思えて敬遠してましたが、この「むかしむかし」は語りたいとずっと思っていました。古風でありながら、現代に生きるおはなしだと思い、語りたいというより「ねぇ、この素晴らしいおはなしを聞いて下さい」そんな電気みたいな感覚が体に走りました。覚えるにはフレーズの長いところや古風な文体は難しいというより覚えがいがありました。そして、語り終えたとき、とても、清清しさを感じました。

後日談:確かに、奥が深いこのおはなしを高学年の子ども達には知ってもらいたいと思い、早速、5年生に語りましたが、「花園を歩いていた時、何を見つけたと思います?」と語ったとき「四葉のクローバー!」と言った男の子がいました。この子の感性も素晴らしいと思いましたね。「花です」と聞いた時、彼はどう思ったか少々気になります・・・

魔法のユビワ [レアンダー] 「ふしぎなオルガン」 岩波少年文庫
おはなしの先輩であり、友人が語るこのおはなしをはじめて聴いた時、とても感動して好きになりました。
あるお百姓が魔法使いの指図通りにした事から小さな金のユビワを手にします。1つだけ願い事を叶えてくれるユビワだと知らされます。
さて、お百姓はこのユビワにどんな願いをしたのでしょう・・・。興味からぐいぐいと話にのめり込んでいきました。
おはなしの結語にとても感じ入りました。「・・悪いものでも良い人が手にすれば、いつでも、悪い人が手にした良いものよりも、ずっと値打ちが出てくるものです。」と。高学年以上におすすめです。

雪女 [日本] 「松谷みよ子のむかしむかし」 講談社  「やまんばのにしき」 ポプラ社 
いつかは『雪女』を語ってみたいと、数年前から思っていました。
ただ、出典に随分迷い、多数の類似作品をこだわりをもって色々何冊も読みました。一般的には、小泉八雲原作の怪談話として良く知られていますが、怖い話というよりも、切なさの残る日本古来の類話になっている松谷さんのおはなしの方が好きで選びました。
ところが、不思議な事に『雪女』という同作品を同じ松谷さんの文でありながら、私が調べただけでも5作品もあるのです。(同作品を同作者で4つもあるとは!もっと、あるとご存知の方は教えてほしいです)こんなことって、他にはあまり例のない事ではないでしょうか?出版社によっても異なり、よく読んで見ると読者の対象に合わせて文を変えておられたり、歳月を重ねる中で、ある種のこだわりをもたれたのでしょう。それだけに、語り手としても慎重になりました。私なりに、こだわりをもって、口に乗せやすさと流れの経過を考えて、上記2作品から言葉を選び、語らせて頂きました。心を込めて語りたいと思いました。また、自然とそうなるおはなしでしょうね。
語り終えると、「し〜ん」と静かな余韻が残ります。
雪の季節になる度に、このおはなしを語りたい気持ちにさせてくれるのではないかと思います。


ゆきんこ [ロシア] 「ストーリーテリングについて」 子ども文庫の会
雪の季節に最適のお話。「ゆきんこ」によって、おはなしの産みの苦しみを知りました。どうしても老夫婦の悲しさを先に考えてしまって失敗の連続。それだけに、このおはなしを聴いて感動したと言われた時は嬉しかったです。私にとって大切な宝物のようなおはなしです。
子どものいない老夫婦が雪で子どもを作っていく場面のイメージ、不思議な人の言葉の難しさ。女の子がお日様を怖がる場面。何も知らない子ども達が純粋さからゆきん子をたき火の炎の中に誘う場面。それに答えようとして消えてしまうゆきん子。子ども達は起こった事が理解できなくてゆきん子を遠くまで呼び続けます。美しい清らかな雰囲気のあるロシアらしい昔話です。不思議な場面が多いので子どもの想像力を深いところで動かすようです。
絵本でも「ゆきむすめ」(福音館書店)としてありますが、6歳以上なら、こちらをおすすめします。

よい子どもたちに [サカリアス・トペリウス] 
美術館主催の丸木俊絵本展にておはなし会をさせて頂きました。その際、ブックトークを兼ねて語った導入のおはなしです。
あまり、通常のおはなし会向きではないかもしれませんが、アンデルセンと並んで北欧、特にフィンランドでは、尊敬され親しまれているというトペリウス作品を知る良い機会になりました。

フインランドの森にいる一羽の小鳥に向かって、天使が子ども達に歌と物語をしてあげなさいと伝えます。自信がない小鳥でしたが、神さまに預けて務めをやりとげることを教えられ小鳥は歌いました。その小鳥の清らかな歌と物語が春風に乗って子ども達のところへきたのですよと優しく投げかけている、その言葉が美しく、気に入り、おはなしの会の導入として紹介しました。

りこうなおきさき [ルーマニア] 「りこうなおきさき」 岩波書店
子供たちはなぞなぞが大好きです。このお話はなぞなぞの要素があるので子供達を飽きさせないどころか興味をもって、おきさきのなぞときを待ちます。例えば、冒頭からいきなり、「羊を売って、そのお金と一緒に羊を持って帰るには?・・」「馬に乗らず歩かず着物を着るでなく、着ないでもなく、土産を持つでなく持たないでなくお城へ来るように・・」との王様の命令におきさきはどうやってお城に出向いたのでしょう?他にもこのような、なぞときがいくつかあらわれます。ていねいに王様の性格とおきさきの若くて聡明なイメージを大切に語ってあげたいです。3年生以上の学年でのおはなし会でクラスの友達同士で聴くと楽しさ倍増するのではないかと思います。

ロバの耳はなぜ長い [イタリア] 「世界むかし話」 ほるぷ出版
「なぜなぜ話」の典型的なお話だと思います。他の方が語っておられたのを聴いて楽しくて好きになりました。語りながら笑ってしまうので笑わないように語るのに苦労しました。神様が付けてくれた名前を忘れてしまったロバは何度も何度も聞きに行きます。
聞いてもまたすぐに忘れて又聞きにいきますが・・根気よくその都度教えてあげていた神様もついに癇癪をおこしてしまいます。神様のした事は・・・・・・・?!そして、とうとうロバは名前を忘れませんでした。子供たちは、にこにこして聞きます。


(追補)

かにむかし [木下順二]  岩波書店
ストーリーテリングの第一歩になったのは、このお話を覚えたことからです。ただし、パネルシアターとして届けるために覚えましたが、最近ではストーリーテリングとして届けてみようかとも考えています。絵本では清水崑さんの絵が素敵なので読み聞かせでもいいと思いますが、五大日本昔話の一つなので耳だけで聴いてもらいたいとも思ってます。さるかに話は色々ありますが個人的には繰り返しのリズムや話の構成など全ての面においてこの作品が一番好きです。
ストーリーテリングへ